AI-OCRで紙資料をデータ化する方法|読み取り精度だけで選ばない導入手順
紙やPDFの書類を見ながら、品目や数量をExcelへ入力する。入力が終わったあとも、元の書類と見比べ、別の管理画面へ同じ内容を登録する。小規模企業や事務所でこうした仕事を担当していると、文字を読み取る仕組みを使えば、どこまで手入力を減らせるのか気になるでしょう。
AI-OCRの導入では、読み取り精度だけでなく、読み取った結果を誰が確認し、どう直し、今の入力先へどう取り込むかを決めます。まずは書類を一種類に絞り、入力から確認・登録までを一緒に試すと、残る手間を見つけやすくなります。
この記事は、紙やPDFからExcelなどへ転記する事務担当者・事務責任者に向けた一般解説です。ここからは、試験用に作った架空の注文書を想定例として、導入前に整理したい手順を説明します。実在する会社の実績や、特定サービスで確認した導入効果を示すものではありません。
先に、入力先で使う項目を決める
最初に見るのは、書類そのものと、その内容を入力している画面です。今回の想定例なら、注文書にある品目、数量、希望日をExcelの一覧へ写し、内容を確認してから業務システムへ登録しています。書類のすべての文字が、その登録に必要なわけではありません。
担当者と、最近の入力作業を一件たどってみてください。どの欄を読み、どの列へ入力し、わからないときは何を確認しているかを見ます。同じ項目でも、書類上の希望日と、社内で決めた処理予定日は別の情報です。読み取った日付を、似た名前の列へそのまま入れないようにします。
必要項目が決まったら、元の書類の欄と入力先を対応させます。たとえば次のようなメモから始められます。
| 注文書から使う項目 | 入力前に確かめること |
|---|---|
| 品目・商品コード | 社内の名称やコードと対応するか。先頭のゼロなどを残す必要があるか |
| 数量 | どの品目の数量か。単位と訂正の有無を確かめる |
| 希望日 | 入力先が求める日付の意味と形式に合っているか |
| 書類を識別する情報 | 元資料へ戻れ、同じ書類の再取込を区別できるか |
この表は架空の注文書を使った整理例です。実際に必要な項目は、今の入力先と、そのデータを使う担当者に確かめて選びます。
文字を読むことと、項目へ分けることを区別する
OCRは、紙をスキャンした画像などから文字を読み取り、機械で扱えるテキストへ変える技術です。AI-OCRと呼ばれる仕組みでは、機械学習などを使った読み取りが行われます。ただし、文字が読めたことと、その文字が注文書のどの項目に当たるかが決まったことは、別です。
たとえば品目と数量をそれぞれ読み取れても、表の行の対応を取り違えれば、別の品目の数量として入力されます。書類に書かれた文字の抽出、必要項目への対応、入力先が求める形式への変換を分けて確かめます。
Google CloudのEnterprise Document OCRも、ドキュメントからテキストとレイアウト情報を抽出する機能として説明されています。文字と配置を取り出したあとに、必要な項目へ整理し、既存の管理表へ渡す工程を考える必要があります。Google公式のEnterprise Document OCRの説明
PDFの場合は、文字を選択・コピーできるかも先に見ます。すでに文字データを取り出せるなら、それを入力に使えるか検討できます。画像として保存されたページや手書きが混ざっている場合は、その部分も含めて読み取り方を選びます。すべてのPDFを同じ条件で扱わないことが大切です。
元の書類へ戻れる形で、確認と修正を残す
読み取り結果は、元の書類を開いて確かめられる形にします。ファイル名やページがわからず、担当者が毎回書類を探し直していると、手入力を減らしても確認の負担が残ります。注文書なら、品目と数量の対応や、訂正された箇所を元の画像と見比べられることが必要です。
読み取れない文字や、意味が判断できない項目は、推測で埋めず「要確認」として止めます。誰が確認し、どの画面で直し、直した内容をどこへ残すかを決めておきます。確認前の結果と、登録に使ってよい確認済みの結果を分ければ、途中のデータを誤って取り込むことを避けやすくなります。
MicrosoftのDocument Intelligenceの説明でも、スキャンの品質、解像度、傾きなどが読み取り精度に影響し、用途に合わせた評価や人による確認が必要とされています。きれいな見本だけでなく、薄いコピーや訂正入りなど、自分たちが扱う書類の状態を試す範囲に含めます。Microsoft公式の読み取り性能と評価の説明
試験には、実際の様式を参考にした架空の書類を用意できます。実物を使う段階の扱いは、社内の担当者と別に確認します。この記事の注文書も、仕事の流れを説明するための架空の例です。
取込先の形式と、重複・失敗時の扱いを決める
確認済みのデータを渡す方法は、入力先から調べます。Excelへ一覧として出せるのか、業務システムが決めた列名や形式での取込に対応しているのかを、管理する人と確かめてください。OCRサービスに出力機能があっても、そのまま別のシステムへ登録できるとは限りません。
たとえば、商品コードを数値として扱うと先頭のゼロが消えることがあります。数量に単位が付いていたり、日付の表記が入力先と違っていたりする場合もあります。試験用の一覧を開き、列の対応と値が意図した形で残るかを、登録前と登録後の両方で見ます。
同じ書類を二度読み込んだときも、確認が必要です。書類番号など、同じ書類だと照合できる情報を使うのかを決めます。訂正版が届いた場合は、別の注文として追加するのか、元の内容を直すのかを、実際の仕事のルールに合わせます。
取込が途中で止まった場合は、何も登録されていないのか、一部だけ登録されたのかを確認してから対応します。そのまま同じ一覧を再取込すると重複する可能性があるためです。登録できなかったものを誰が確認し、手作業で補うかも、最初に試す範囲へ含めます。
一種類の書類で、確認を含めた手間を比べる
最初からすべての書類を対象にすると、様式の違いや例外が増え、何がうまくいかなかったかを追いにくくなります。必要項目と入力先がはっきりしている一種類を選び、従来の入力結果と照合しながら試します。
見たいのは、文字の正解率だけではありません。準備、読み取り、確認と修正、取込、登録後の確認にかかった手間を、元の作業と比べます。入力が速くなっても、訂正する画面が使いにくかったり、原資料を探す時間が増えたりすれば、その工程を直す必要があります。
うまく読めなかった書類は、原因と修正の仕方を残します。画像を取り直せば読めるのか、項目の対応が違うのか、人が判断しなければ決まらないのか。理由を分けると、設定で改善する部分と、人の確認として残す部分を選びやすくなります。
入力作業を一件選び、相談できるメモにする
この記事を読んだあと、まず担当者と、最近入力した書類を一件選んでみてください。次の内容がわかれば、既存の機能を調べるのか、確認画面や取込のつなぎ方を相談するのかを具体的に話せます。
- 書類の種類と、紙・文字PDF・画像PDFのどれを扱っているか
- 読み取りたい項目と、入力先の列や画面
- 元資料の場所、確認する人、修正した結果を残す場所
- 同じ書類や訂正版が届いたときの扱い
- 取込に失敗したとき、誰が結果を確かめて補うか
しごとのとなりでは、今の管理表や業務システムを使う流れから、どの入力と確認を整えるかを一緒に考えます。書類の種類、入力先、そこで残っている手作業をもとにご相談ください。相談の最初は、実際の内容を含まない空の様式や、架空の記入例で説明できます。
入力を減らすことよりも、過去の資料を探せるようにしたい場合は、社内文書をAIで検索できるようにする方法の記事も参考にしてください。データ化したあと、何に使いたいかによって、整える仕事は変わります。